男が、白いシルクの裳裾をひるがえして、馬から下りる。
唇に薄く笑みをはいたまま、ゆっくりと俺に近づいてくる。
近づいてくる。
くいっ、と俺のあごをその力強い、でも長く美しい指で持ち上げる。
「白く、みずみずしい、白桃のような肌。陽光に透けても変わらぬ、漆黒の髪。極上の獲物だ。だが…」
そのまま、指をつーっと俺のほほへ、首筋へ、胸元へ滑らせて……。
「美しい体が、醜い衣で包まれているのは、無粋だぞ!」
ベリッ!
言うが早いか、俺の上半身を裸にした。
桃の皮でもむくみたく、くるんっと。
「なっ、なっ…」
俺はというと、これで、いままで夢の中の出来事みたいでされるがままだったのが、いっきょに覚醒して、ばーんっと現実感がもどってきた。
なにするんだっ、コイツ。
そりゃ、服とかドロドロだけど。
裸にむくことないだろっ?
どこの石油王のバカ息子だーっ。
「てめっ、なにするっ…」
「まずは、どこから味わおう? やはりこの甘そうな唇か」
男はぜんぜん悪びれないどころか、俺の抗議なんて丸無視だ。
それどころか。
(キスッ…されたぁ!)
圧倒的なガタイの差で、俺の抵抗なんか笑いながら片手で封じて。
マ、マジで、コイツ、でかっ。一八0センチはありそっ。
俺を草地に押し倒して。俺の唇を舐め、吸い、吸いあげ、たっぷりと味わって。おもわず、息苦しくなって俺が開いた唇のすきまから、するりと…。
わっ、バカ、舌入れんな。
俺のファーストキスゥ…。
やだっ。
「ん…やっ、んっ…んんぅ……」
「オアシスの赤い野苺のように、美味。さて、お次はどこを食べようか。ん…?」
男がやっと唇を解放し、俺の顔をのぞきこんで、その青い瞳をすっ…とすがめた瞬間、
(食われる!)
と、思った。
真剣に。
もちろん、普段なら、そうは取らないだろう。食べる=エッチするだって、知らないわけじゃないから。でもこのときは、さっきの人食いライオンと、目の前のライオンのような男が重なって、まともな判断ができなくなっていたんだ。
やだやだっ。
人ライオンに食われちゃうなんて。
そんなの、あんまりだよっ。
「そうだな。次は、胸の赤い木苺をいただこうか」
「あっ…!」
かぷっ、と人ライオンが俺の胸をかぶった。
や、やられたっ。
急所をやられたぁっ。
(も、ダメッ…。だめっ……。だめ………じゃない?)
おもわずギュッと目をつぶった俺だったけれど、いきなり心臓を狙う気はないらしい。
乳首を舐めたり、しゃぶったりしている。
こ、これは。まだ助かるかも。でも、どうやって? どうやって? そうだ、死んだフリ! って、それはクマだろ。ライオンじゃないだろ。でも、ダメでもともと。
やってみるっきゃない!
くったりと体の力を抜いて死体よろしく横たわった俺の乳首を、男が味わう。
ざらついた舌で、舐めあげて。
舌先で、つついて。
「………。……ん」
口に含んで、乳輪ごと吸いあげるようにして。
唇をすぼませて、ちゅっと強く吸って。
「…ん。ふっ……」
もう片方の乳首も、指で味わってる。
指の腹で、押しつぶして。
指先で、ころころと転がして。
二本の指にはさんで、くちゅくちゅと擦りあげて。
「ふっ…、んっ…、ぁっ……」
って、なに、ヘンな声出してるんだよ。俺。
死んだフリしなくちゃ。死んだフリしなくちゃ。
でも、なんか、食べられてる胸のへんが、もやもやして、じんじんして、熱っぽくて、熱くて口から勝手に声が飛び出しちゃう!
俺、ヘン…。
すごく、ヘン……。
「ぁっ…、んっ…、ぁっ……ん」
「ずいぶん感度がいいんだな。絶品だ。これなら、ハーレム一の寵童の地位も夢ではないぞ」
かんど……? はーれむ……? って、なんだっけ。
もう、胸も、体も、頭も、熱くて、ぼぉっとして、なにがなんだかわかんないよぉ……っ。
「乳首責めだけでこんなに感じていては、ここを可愛がってやれば、どうなってしまうのかな。ふふ…楽しみなことだ」
「えっ!?」
でも、男が含み笑いをしながらそう言い、俺の脚を押し開いて、その間へ頭をずらしたとき、俺はなけなしの勇気をふりしぼったんだ。
この続きは『アラビアンナイトな略奪愛』
本文でお楽しみください♪♪