あなたの指は僕を奏でる
あなたの指は僕を奏でる

『あなたの指は僕を奏でる』

結城瑛朱 著/すがはら竜 画

2009年3月25日発売『あなたの指は僕を奏でる』の発売を記念して、ファンの皆様に発売記念★特別書き下ろしSS、及び、すがはら竜先生の美麗な描き下ろしイラストお届けします。穏やかに想いを育む、二人のラブ・ストーリーをお楽しみ下さい♥

●キャラクタープロフィール

宮本雅矢(みやもと・まさや)
30代半ば。東英大学付属病院の準教授。 日本有数の企業・宮本グループの会長の孫で、その遺産を継いだ筆頭株主でもある。 10年前に夏生と交わした約束通り、藤村家から彼を連れ出すが、その行動の裏は…。

藤村夏生(ふじむら・なつき)
20歳。藝大でピアノを学ぶ青年。 細い栗色の髪、白い肌、大きいこげ茶の瞳、年齢にしては華奢な身体をもつ。 両親を既に失い、異母兄とも折り合いが悪く、居場所のない家から連れ出してくれるという宮本の手を、何の疑いもなく取るが…。

●あらすじ
『いつか、必ず夏生を迎えにくる』 ――十年前の約束通り、音大生になった夏生の前に外科医・宮本は現れた。優しげな面影が精悍な大人の余裕に変わっていても、その手を待ち続けていた夏生にためらいはなかった。しかし夏生に知らされたのは、異母兄が夏生を売ったという事実で!? 夏生を所有物と言い放ち、その立場を思い知らせるように暴力的なまでの快楽を与える宮本。だが、まるで大切な者を呼ぶような声音に、夏生はいつしか惹かれていき…。
はじめまして。そしてこんにちは。結城瑛朱です。今回は外科医×音大生という、結城が大好きな歳の差カップリングになりました。優秀な外科医なのに不器用な雅矢と、世間知らず(笑)で一途な夏生とのちょっぴり切ない純愛をお楽しみいただければ幸いです。
本編は殆どが夏生の視点から書きましたので、今回は無口な雅矢さんに頑張ってもらいました(笑)。 こちらの掌編に出したボッティチェリの『春』に描かれている人たちが本編でもチラリと出てきます。そんな遊びを入れてみました。
お忙しい中、すがはら竜先生には本当に素敵なイラストを描いていただきまして、誠にありがとうございます。 彼らの恋愛の行方と共に、クラシック音楽にも興味を持っていただければさらに幸せでございます。どうぞ、よろしくお願い致します。
 夏生の知らない母の生まれ育った家で、宮本は母にピアノを教わっていたのだろう。
 この人も、母の美しいピアノの音色を知っているのだ。そう思うと、夏生はすこし嬉しいような気分になった。
 そんな人が、遠い昔の約束を覚えてくれていて、自分を迎えに来てくれた。
 母を失って哀しみの暗闇に沈み込んでいた夏生にやさしく手を差し伸べてくれたその人が、いま眼の前にいる。
「何を微笑っている?」
 この再会を母に感謝していた夏生に、男は何故かやや不機嫌そうに眉を僅かに歪ませた。
「君は、自分の置かれた状況を何も理解していないようだな」
「……え?」
「君の兄に貸した金額は二億だ。高が二億の金で、隆一君は君を棄てた」
 男の云っている言葉の意味が、理解できなかった。
「どうやら、おまえは何も聞かされていないようだな」
 呆れたように溜息をつく宮本を、夏生は大きな瞳をいっぱいに開いて見つめた。
「夏生。もうおまえには帰る場所などどこにもない。金と引き替えに、おまえの兄はおまえのこれからの未来をすべて私に売り渡したんだよ」
「……それは、どういう……」
 軽く回っていた酔いが、一気に醒めていくのを感じた。
 声が顫(ふる)えて、言葉がうまく続かなかった。
「おまえのような音楽家などを目指す弟など自分には不要だと、君の兄さんは云っていた。隆一君が棄てたがっていたおまえを、私が買い取ってやったんだ」
「僕は……、兄さんに棄てられたのですか……?」
「夏生、おまえはこれから私の許でこれまでどおりピアノの勉強を続ければいい。生活費、学費の心配など必要ない。せっかく現役合格で入った藝大だ。そちらも辞めることはない」
 ただ……と、男は低い声音で続けた。
「忘れてはいけないことがある。おまえは私の所有物だとうことだ」
 その時、男は再会してから初めて、恐ろしいほどのやさしい笑みを夏生に見せた。
この続きは『あなたの指は僕を奏でる』
本文でお楽しみください♪♪
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