「え…いじ、あの……ぁ」
「嫌か?」
ちっとも嫌じゃない。
そう言う代わりに、懸命に首を振った。尋ねる声が少し幼くて、頭の片隅で(可愛いな)なんて思ってしまう。瑛士も同じように不安なんだと、そう思ったら少しずつ緊張が解れてきた。同時に、この男が自分を欲しがっているという事実に、沙月は深い満足感を得る。
「なぁ……」
「え?」
「初めて、なんだよな? おまえ」
「わ、悪いか」
「いや、俺がそういうの慣れてない」
「…………」
沙月より、むしろ瑛士の方が照れ臭そうなのが不思議だった。けれど、瑛士にならどこまでも許せそうな気がしたし、何をされてもいいと本気で思う。何より、初めて肌を合わせる相手が彼であることが素直に嬉しかった。
「あ…ぁ……」
屹立する輪郭を、長い指が絡みつきじっくりと愛撫していく。声を殺そうにも次々と快感が押し寄せてきて、沙月はただ喘ぎながら身悶えるしかなかった。
「ダメ…だ……変な声……出る……」
「いいんだよ。もっと聞かせろ」
「そん…な……あぁっ」
下半身への刺激と同時に、耳たぶを噛まれてまた声が溢れる。自分が、こんな甘ったるい声を出すなんて夢にも思わなかった。瑛士の手の中で翻弄され、シーツに余韻の波紋が広がる。沙月は息を乱しながら、いつしか目尻に涙を溜めていた。
「辛いか?」
体調を気遣ってか、涙に気づいた瑛士が囁いてくる。だが、沙月にも滴の理由はわからなかった。ただ、行為の裏に感じる愛情を、いつまでも留めておけないのが悔しくて切ない。誰に憚ることもなく瑛士を恋人と呼べたら、こんなにも悲しくはなかっただろうか。
「もっと……もっと好きにしていい」
「沙月……」
「瑛士の好きなようにしていいんだ。だから……」
お願いだから、大切に扱わないでくれ。そう続けたくて、無理やり言葉を飲み込んだ。瑛士は大人だし、言わなくてもきっと全部わかっている。明日になって、何もなかったような顔で振る舞わなくてはいけないことも、それきり自分たちが平行線に戻ってしまうことも。
(本当に……いいのか、それで? 何もなかったと、自分へ嘘がつけるのか?)
ふと、心のどこかでそんな声が聞こえた。
沙月はハッと瞳を開き、目の前の瑛士を無言で見つめる。「後悔しない、なんて嘘だろう?」と言った彼の言葉が、耳の奥で憂いを帯びて蘇った。
「瑛士、僕は……あ」
皆まで言わせず、瑛士の左手がパジャマのボタンにかかる。器用に一つ一つ外しながら、その間も瑛士の右手は悪戯を仕掛け続けた。
「あぁ……っ」
露わになった胸元へ、今度は唇が寄せられる。浮き上がる先端を啄ばまれ、軽く吸われると、それだけで麻酔のように爪先まで痺れが走った。
いつの間にか下着まで剥ぎ取られ、生まれたままの身体を組み敷かれながら、沙月は無防備に暴かれていく。瑛士の指や唇が触れるとすぐに淫猥な微熱が生まれ、為す術もなく感じさせられてしまうのが恥ずかしかった。
この続きは『野蛮な守護者』
本文でお楽しみください♪♪